編集員通信


“キングヘイローの走りに注目”

 スプリンターズステークスは今年で33回目を迎える。日本では久しく中、長距離を重視する傾向にあった。90年(第24回)からGIに格上げされてからは、多少向けられる目も変わってきてはいるが、天皇賞やジャパンC等に比べればうんと格下に扱われていた。
  4歳のクラシック路線をトップクラスとして歩んで来ていたもので、短距離中心の路線へ切り換えてくるものは今も多くない。せいぜい1600mの安田記念ぐらい迄で、それ以下の距離には踏み込んで来ようとしなかった。95年秋に、ジェニュイン(皐月賞馬)が、菊花賞へ目もくれずに天皇賞へ挑んだ。距離適性を重んじた上での決断。それがひとつの意識改革をもたらせたように思う。
  例年通り、今年も出走レースを制限されているマル外馬が主力を形成しているが、そこへキングヘイローが殴り込んで来た。ナリタブライアンが96年の高松宮杯に挑んで4着に敗れた時“あれ程の馬でも歯が立たないほど1200m戦は異質だ”と言われたものだが、武豊は“決して距離不足が原因ではない”と言い切っている。
  天皇賞から宝塚記念に向かうはざまであり、初めから高松宮杯をターゲットとしていたなら、99パーセント負けなかったろうと思う。1600mでトップランナーなら、1200mでもトップランナーになり得る。狙うべきレースをどこに置くかで答えは違ってくる。少なくとも今のキングヘイローはトップマイラーと言えよう。例えデビュー以来1600m未満で1度も戦ったことがなくても。優秀なマイラーなら、デキさえ整えられている限りは1200m戦でもそれに見合った走りを見せてくれるはずだ。
  将来この手の挑戦者の扱いをどうするかの、最良の手本となってくれるものとこの一戦は非常に興味深く見守りたい。


編集局長 坂本日出男



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